経験問題回答例2(1997.6.23.掲載)

 太田が平成6年の試験時(建設部門:土質及び基礎)で書いた回答例の元になっている文章です。これは平成2年の関西土質研究センターの機関誌に、テクニカルレポートとして投稿したものです。建設部門の受験時には原稿を作りませんでしたので、これしかありません。内容的にも、ストーリー展開的にもほとんど同じように書いたと記憶していますので参考までに掲載します。


 

ボ−リングスピ−ドメ−タ−を利用した開口亀裂の調査

  1. はじめに
     
    岩盤斜面の安定問題を扱う際しばしば「開口亀裂」が問題となる。開口亀裂の位置や幅はボ−リングコアを見ただけではわからない。また、硬質の岩盤が地表からボ−リング終点まで分布していて、どこまでが不安定でどこからが安定なのか不明確な場合がしばしばある。
     ここでは、表−1(省略)斜面運動の中の、岩の転倒(
    rock topple)を調査・解析するたにボ−リング掘進速度を記録し、開口亀裂が検出できた例を2例とりあげ紹介する。
  2. 切土斜面で見つかった開口亀裂の3次元分布を解析した例
     現場は、三波川帯の黒色片岩層からなる岩盤法面で、道路改良工事にともなう岩盤切土斜面の数ヵ所に穴があいているのが現場作業中に見つけられた。そこで、現場責任者は、切土作業中の岩盤崩壊を懸念して工事を一時中断した。
     地表からの観察では、これらの穴は節理面を境界として形成されており、下方では消滅していることなどから、岩の転倒(トップリング)によるものと判断された。
     また、これらの穴は上方が閉じた形状となっているが、注意深く観察すると片理面が緩み、片理面沿いに微少量ずつの変位が生じ、見掛け上つながっているように見えていることが判明した。(図−1参照)
     この岩盤にあいた穴の調査のため斜面から水平ボ−リングを行った。ボ−リングの位置は鉛直方向の間隔約3m、水平方向の間隔約8mの格子状(3列×3段=9孔)に配置した。一断面当たり3本のボーリングが入るように配置した理由は、トップリングが「節理面」で発生しているので、面構造を特定するために2点では不十分と判断したためである。
     ボーリング作業においては、ボ−リングスピ−ドメ−タ−をセットし、掘進長と掘進速度を計測した。図−2にその記録の一部を示す。急激に掘進速度が増加しているところに開口亀裂が存在し、掘進長の記録からその開口幅が読み取れる。
     それぞれの
    ボ−リング孔から得られた記録をもとに開口亀裂の鉛直分布・水平分布を解析した。それらの一部をそれぞれ図−3、図−4に示す。開口亀裂は、その位置と三次元構造が明瞭になるとともに、開口幅の変化から、トップリングが発生している範囲も推定することができた。
     この調査・解析結果を基に、切土工事は斜面上部から開口亀裂の分布に注意しながら行われ、無事竣工に至った。
  3. アンカ−工定着岩盤の位置決定に用いた例

     現場は、丹波帯の砂岩・粘板岩互層地域で層状チャ−トを所々に狭在する道路法面である。この法面は、土砂層の被覆は非常に薄く、ほぼ岩盤で構成される急斜面で、所々に崩壊を起こしている。この斜面の崩壊形態も節理面に沿ってブロック化した岩塊の転倒(トップリング)である。現場状況から、対策工としては現場自在枠工とアンカ−工の併用が提案された。しかし、ボ−リングコアは孔口近くから硬質な岩であり、アンカ−定着部をどこにおくかということが問題になる。そこで、アンカ−定着部の条件を「開口亀裂がない深度」とし、ボ−リングスピ−ドメ−タ−を斜ボ−リングにセットして調査を行った。
     その結果、亀裂の頻度は深部になるにつれ徐々に減少し、開口性亀裂の開口幅は深度数mで急激に減少することが判明した。アンカ−定着部は、開口亀裂がなくなった後数mの安全をとった位置に決定した。
  4. あとがき
     地盤の調査方法としてボ−リング調査は地下深部の資料を直接採取してくるという点で非常に優れた方法であるが、地下に存在する空洞についてはボ−リングコアからだけではわからない。従来、開口亀裂の存在の有無はボ−リングオペレ−タの感覚頼みであった。従って
    オペレ−タの技量にその調査結果が大きく左右されることがしばしばあった。しかし、ここで紹介したボ−リングスピ−ドメ−タ−を用いれば、個人差のない定量的な結果を得ることができる。