技術士合格のコツ
我が社の2人の技術屋は、さしたる苦労もせずそれぞれ2つの部門の技術士
を取得しています。一生懸命受験対策をしたからといって、簡単に合格するもの
ではありませんが、一方ではあまりなにもせずに合格する人もいます。
技術者の能力は、具体的な問題に対して、工期や費用を考えて最善の解決策
を出すところで発揮されます。しかし、技術士試験で求められているのは、その
ような具体的な問題解決能力ではなく、「技術者としての表現力」であると思い
ます。
というわけで、試験の合格は、いわゆる技術者としての実力以外に、「コツ
」が必要だと思いますので、それについてぼちぼちと書きつづっていきます。
第1章 日々の暮らし
- 毎日お仕事ご苦労様です。そのうえ、技術士の試験勉強をしようと思ったら、
寝る間がなくなってしまいます。また、応用理学のような幅の広い問題の勉強を
しようと思ったら、それこそ仕事どころではなくなります。
- それでは、日々の仕事=試験勉強 としてしまえば、なにもしなくて良いこと
になりはしないでしょうか?実はそれがもっとも確実な方法なのです。
- 1日に1つづつ何かの知識を蓄えていきましょう。忘れてもかまいません。1
つの業務が終わるたびに確実に身になる知識をひとつだけ増やしましょう。それ
だけで、十分です。
- 年間に20件位の業務は最低行っていると思います(大きな物件専門の方は、
それくらいの節目があるはずです)。1物件につき1つずつプラスαの知識を身
につけるだけで、技術士の受験資格ができる7年間に140件の知識が苦労せず
に身に付いています。実際には知識は自己増殖をする(または複利で増える)の
で、200件分に達することでしょう。この間、あなたはほどんど苦労する必要
がないのです。この「苦労しないこと」が最大のコツです。
- 技術士試験は国家試験です。国家にとって望ましい技術者とは何かを日々考え
ましょう。たいへんに難しい問題なので容易には答えが出ません。最も簡単な方
法は、どのような設問があるのかを調べることです。できれば20代の前半で試
験問題をチェックします。そうすると問題意識を持ったまま数年間暮らすことが
できます。試験の直前にどんなに一生懸命考えても、問題意識+数年間には及び
ません。
- 「いつまで”日々の暮らし”を書いているんだ!、具体的な方法を教えろ!」
という方がいらっしゃるかもしれません。しかし、わたしは何か具体的な受験勉
強というものをしていないのです。となると、日々の暮らしの中にそれが潜んで
いたと考えるべきでしょう。
- 文献紹介のところに、いま我が社で購読している資料を紹介していますが、2
0代の時代にはそのうち ・地質学雑誌 ・岩波科学 ・月刊地球 ・環境情報
科学 ・日経コンストラクション ・日経パソコン ・日経CG ・日経ビジネ
ス ・日経ベンチャー ・日経コミュニケーション などを購読していました。
(前の)会社で購読している雑誌は、自費で買うのは惜しいので会社で読んでい
ました。
そのときに心がけたことは、送られてきた雑誌類を読む機会、目を通す機会は
、封をあけた直後しかない!ので、その場で全部に目を通すようにしたことです
。会社にきている雑誌でも目に入った直後に、必ずチェックし、時間があいた瞬
間に目を通すようにしました。中身までは熱心に読むゆとりはありませんが、1
0回に1回くらいは、「これは!」と思う論文にであうものです。そのような文
献はコピーして取っておきました。
- また、一つの業務(請負額300万程度)をするたびに、JICSTの文献検索と
コピーサービスで、3千円〜1万円程度を使って(もちろん会社の金!!これく
らいなら目立たない)、文献を収集しました(会社の金で収集した文献は、コピ
ーしてみんなに配り、責任を分散しましょう)。これも10に1つくらいは、良
いものに出会います。
このように、確率は低いけれど、継続して文献に目を通す時間を作ってきまし
た。長い時間をゆったりと使っていますので、苦労など全くありません。
だいたい、文献の収集などにエネルギーを浪費するのはもったいない限りです
。これは!という文献の中身を理解するのにエネルギーを使う方が賢いと思いま
す。「苦労して得た情報は....それを得るために疲れ切ってしまい身になら
ない...」ということが事実です。「苦労しないで情報を得る方法」を考えま
しょう。インターネットもその選択肢の一つとなり得ると思います。
大した苦労もせずに集めた「わたしにとって中身の濃い」文献のコピーは、前
の会社にいた約8年間に、厚さ10p位のファイルで10冊程度になっていまし
た。知りたいと思ったときに収集した文献ですから、そのほとんどを大まかに記
憶しています。それだけのものを受験勉強で得ることは不可能だと思います。
第2章 技術士に何が求められているのか
- 技術士試験は、技術者の資格の中で最高難度のものです。よく陥りやすい誤解
に「技術力が高い人しか受からない」というものがあります。試験においては、
誰が何の目的で作った試験なのかを十分考える必要があります。
技術士試験は、言うまでもなく国家試験ですから、国家が求めている人材を評
価する試験です。国家とは、部門によっては建設省であったり、科学技術庁であ
ったり、環境庁であったりします。
- たとえば、外国人の就労問題などに関しては、方法論や将来展望などよりも、
まず「合法であること」を国は求めます。また、「技術者」と「研究者」の違い
についても非常にこだわっています(特に応用理学部門でその傾向が強い)。両
者の違いについて、明確な答えはないのですが、私見としては「研究者の求めるものは”真実・真理”であり、技術者の求めるものは”与えら
れた条件内での最善の解決策”」であると思っています。どちらかといえば、これらの設問は、口頭試験の時に
問われるのですが、試験全体の流れを把握するためには、日頃から自分なりの考
えを持っておく必要があると思います。
- また、各部門の所轄省庁(きっとあると思います)の考え方を知っておく必要
があると思います。たとえば、建設部門であれば建設省の今の考え方を知ってお
き、自分の意見がたとえあろうとも、今の建設省の見解を真っ向から否定するの
は得策ではありません。財政赤字の問題に関係した公共事業投資に関しても、新
聞や大蔵省などは抑制の方向を打ち出していますが、建設省は「来るべき高齢化
社会に向けて、体力のある今こそ社会資本を充実させる時である。建設国債は、
社会資本となって残るのであるから、国民に対する借金とは異なる。」という見
解のようです。自分の意見は、自分の中にしっかりと持っておいてください。し
かし、技術者はクライアントの意向を汲むのも仕事のうちだとある程度割り切っ
た方が良いと思います。
建設広報協議会の刊行物
などを参考にすると、最新の建設省の考え方がわかると思います。(私がこ
れを知ったのは最近ですので、どれだけ役に立つかはわかりませんが。。。
- 技術士試験ということにのみ的を絞れば、「技術士に何が求められているか」
ということは、過去の試験問題を読むことによってある程度理解することができます。ここで、注意しておく点は、でき
るだけ早い時期(20代前半)に試験問題を見ておくということです(前にも触
れました)。
第3章 まずは不合格通知から
- 「十分に準備してから受験して、願わくは1発で合格しよう」などとは夢にも
思わないでください。十分な準備など絶対にできません。また、勉強するあるい
は常に問題意識を持ち続けるエネルギーは、自らの努力では湧いてこないのがふ
つうです。全く準備をしなくても結構ですから、一度受験してみてください。あ
る程度技術的な自負心がある人は、たとえ準備していなかったにしろ「不合格通知」をうけとると、とても悔しいものです。その悔しさが動機付けになります。自分の中にあるエネルギーを、自分だけ
の力で取り出すのはとてもむずかしいものです。いろいろな力を借りることがコ
ツです。
- 次にやることは、自分の知人・友人にも技術士試験を受けさせることです。彼
が通って、自分が落ちることを想像すると、なんとなく焦ってきてエネルギーが
表に出てきます。自分自身のプライドを、安全なところにおかないことです。つ
ねにプライドが砕け散る可能性があるところに居続ければ、問題意識も高まりま
すし、動機付けも容易になります。
若い人に「学会で発表しなさい」とよくけしかけますが、これは業務内容がす
ばらしいからではなく、「外で恥をかいて悔しい思いをしてきなさい」というこ
とです。会社内での位置取りに腐心していては、何も生まれません。
- 人の仕事に首を突っ込む癖をつけてください。最近の会社組織は、独立採算性
に代表されるように、社内にあってもよそのことは知らない、というスタンスが
多くなっています。「コンサルタントは問題解決屋」です。あらゆる情報を常日
頃から得る努力を惜しんではいけません。ほかの技術者が困っている問題は、最
良の勉強のチャンスなのです。わざわざその機会を逃すのは、とても惜しいこと
です。
第4章 自分の文章はほんとうに読みやすいのか?
- 技術士試験では、試験官が答案を読むわけです。人の文章を読んだとき、読む
に耐えなくて放り出してしまった経験をお持ちの方は多いと思います。自分で納
得した文章でも、人が読むと読むに耐えないということはしばしばあります。ま
た、読む相手に類推することを無意識のうちに求めているケースもあります。ま
た、試験官を専門家と思ってはいけません。素人に近いと考えてください。
- 自分の経験問題の原稿はかならず誰か専門外の人に読んでもらってください。
自分では名文だと思っていても、とてもわかりにくい、または読みにくい文章で
ある場合が多いと思います。通常、長ったらしい文章は読みにくくなります。
- 文章の練習は、思いついたときに書き留める道具を身近に書ける環境が必要で
す。多くの技術屋が「野帳」にメモを書くようですが、私はずいぶんと前から大
きな分厚いノートを使っています。それにFAXや切り抜きや、自分が得た情報
、思いついたこと、新しい商売のしかた、プログラムのアイデアなど、すべてを
貼ったり書き込んだりしています。10年以上前に書いたことで、いまでも参考
になるものが多くあります。お勧めできるかどうかはわかりませんが、「野帳」
を「ノート」に変えてみるのもひとつの方法だと思います。
第5章 ハードルを越えるためには
- 「この程度のことができないのか!」と吼える上司がたまにいます。困難の絶
対値は、克服できるかどうかということには直接関係しません。現在のレベルか
ら、次のレベルに進むときの高度差、即ちハードルの高さが問題なのです。一見
簡単なようでも、当事者にとってはとてもハードルが高いことがあります。たと
えば、私がこれまでに経験した最大のハードルは、なんと「卒論」です。今から
考えると、一生懸命やったことはやったのですが、レベル的にそれほど高くはな
かったと思います。でもそれ以前の自分から次の自分へ移るハードルはとても高
かった。
- 一度に高いハードルを越えようとすると、たとえ越えたとしてもくたびれ果て
てしまいます。少しずつ越えることが肝心です。「継続は力なり」これはその時
々のハードルを低くして、数多くのハードルを越えることができる最大のコツで
す。
- その生活リズムをつかんで下さい。野球人がいうところの「本調子」は必要な
いのです。ごくごく普通の日常のペースが大事です。