2003年度決算報告

<有限会社太田ジオリサーチ>

1996年度〜2003年度の営業成績推移一覧表(単位千円)

■2003年度の代表的な業務実績

■2003年度の業務分類と内訳比率

■財務資料

2004年度の営業見通し
【2003年度の評価】
 2003年度は、見かけ上下請け業務が増えているが、実際には元請に近い形での受注形態で、たとえば「名刺の数が足らないので指名ができない」等の理由で直接受注に結びつかなかったものであえる。純粋な下請け業務は、事実上ほとんどなくなっている。公共事業に関しては、今後もこの傾向は続くものと考えられる。
 2003年度の公共事業は、地質調査関連では、下記資料などから10%以上の減少となっている。この状況下で前年度比3%減に留まっていること、およびここしばらくの傾向がほぼ横這い状態であるというのは、当社の業態は、技術者が消化しうる業務を受注しているに過ぎないことを示している。このためその単価の下落分だけ総受注額が減少しているというように解釈でき、市場の冷え込みとは直接的には連動していない。社員数を増員すれば、その分受注高も増えることになるが、当社の技術者が特別に高い技術力・対応力を兼ね備えていることにより実現できていることであるため、その実現は容易ではない。
 決算上は創業以来13期連続での黒字決算となった。
 
 ソフト販売の受注は、コンサル業界の設備投資意欲の低迷により伸びなかった。ただし、地質の3次元化の要求が強まっていることもあり、問い合わせ件数は多くなってきている。当社が取り扱っている地質の3次元可視化ソフト「MVS」は、約350万円と高価であるが、同種の表現が可能なソフト、シュランベルガーやバルカンといった2000万円級のソフトと比べると廉価であるため、今後需要が伸びてくることが予想される。また比較的廉価なソフトであるジオラマが多量のデータの取り扱いを苦手としていることから、ジオラマからの乗り換えの問い合わせも急増している。
 
 今後は民間需要開拓が喫緊の課題であるが、2003年度は民需を喚起し、「防災産業」を興すためのNPO設立にも大きく投資した。都市公団OBの方への投資も含め、NPO設立のために350万円超を投資した。こういった努力の結果、このNPOは2004年4月に認証された。(NPO設立の目的が達成されたので、OBの方との契約は2004年3月をもって打ち切った)。このNPOにおいて当社は、一般市民に地盤災害の知識と、ほんの少しの努力でそれを防げるという智恵を常識化させるような働きかけを行う。これは「市場は自らが創る」という考えに立脚し、その活動こそが「防災産業」の種と考えるからである。

 このような積極的な民間需要喚起を行う一方で、千代田器材株式会社と共同でZAMメッキを施した排水補強パイプの開発や、錆びない鋼管集水ボーリング保孔管サビレス100の開発を行い、亀の瀬地すべりで第一号工事が実施され、また京都府で第二号工事が2004年夏頃に予定されている。さらに、2003年度初頭から、鋼管膨張型ロックボルト工の斜面対策工への適用について、千代田器材株式会社および日新鋼管株式会社との共同研究を開始し、2004年度当初には実用化のための実験にこぎ着けた。これらは、東海・東南海・南海地震等の巨大地震時の緊急輸送道路確保という国家的課題の解決に大いに役立つものと考えている。また、グラウトを用いない斜面補強工は、工期・工費ともに画期的に低減できることから、今後は民間需要まで考えた斜面対策工としての拡販を考えている。

 当社は新技術を取り入れた対策に躊躇なく取り組むところが特徴であるため、その方向性は堅持していく。平成13年度に設計した急傾斜地崩壊防止対策としてのグリーンベンチ工も竣工し、高い評価を得た。

 また、エクセレントスモール企業が集結したDOMAが組織され、その会合が行われた。IT革命が引き起こす情報の自由流通は、本物だけが残る仕組みとなるので、いまのうちから本物の実力を持つ企業と連合しておくことは有意義である。ただし、ビジネスとしての近い将来の成功があるかどうかは不明である。

【2004年度の見通し】
 2003年度末に公表された大滝ダム白屋地区のプロポーザルに参加した。白屋地区地すべりは、亀の瀬地すべりよりも一回り小さい地すべり地であるが、亀の瀬地すべりと異なり湛水という人為的なインパクトが与えられる場所である。亀の瀬地すべりを止めるために約500億円の対策工がこれまでに投入されていることを考えると、通常の工法では100億円前後で止めることは困難と考えられる。プロポーザルの要求事項は、工事費90億円以下、工期36ヶ月以下という厳しいものだったが、ニュージーランドのClydeダムのBrewery Creek Landslideで用いられているLow Level Drainage Works湛水面下地下水排除工)であれば対策可能と考えプロポーザルを提出したが、実現性・的確性において全く評価を受けず不特定となった。提案内容自体には自信を持っているので、会社の信用性の問題が最大の要因だったものと考えられる。今後も、意気消沈せず、チャンスがあれば積極的にプロポーザルに参加していきたいと考えている。

 今年度も、公共投資は10%程度の減が約束されており、市場は凍りつつあると言っても良い。しかし、小さくなったといっても、当社のような零細企業にとって見れば公共市場はとてつもなく大きい市場であるため、市場制約は事実上存在しない。認知度の向上がシェアの拡大を意味するものと考えられるので、広報活動には大いに力を入れていく。しかし、公共市場は、いつ受注できるかわからない非常に不安定な市場であるため、安定的な民間市場を形成する努力を怠らず行わなければならないと考えている。

 当社の強みは、少ない社員が自ら多能工的に技術を発揮できる点にある。先の大滝ダム白屋地区プロポーザルにおいても、数日のうちに地質の3次元モデル化3次元安定解析、あるいは提出資料作成・数量拾いなどを、固定費以外の原価をかけず(直接原価ゼロ)に実現できる点などは、他社との競争力が非常に大きいと考えられる。この強みを今後も最大限発揮していくことが必要である。

 特に、周縁部摩擦を考慮した3次元安定解析は、いままで謎だった「土質試験結果が安定解析に使えない」というパラドックスをうち破る画期的手法であり、単一すべり面強度による2次元安定解析手法を駆逐する可能性があるので、地質業界発展のためにも成功させるべき課題である。

 2004年4月にフォーラムエイトが、廉価版の3次元安定解析ソフトを発売した。これは3次元安定解析の普及にとっては福音であり基本的に歓迎している。また、MVSのようなことができる10万円程度の廉価ソフト(たとえば3D-Pro)も出てきており、地質の3次元化の普及に弾みがつくものと考えられる。普及すれば、そのなかから高機能・高付加価値を望む人達がある率で出現してくるものと考えられるためである(当社が販売しているソフトの機能およびノウハウが必要なユーザーは、全ユーザーの数%と考えているが、全ユーザー数を増加させる方法がいままでは存在しなかった。ソフトハウスの進出は大歓迎である)。

 また、日本地すべり学会土木学会等の学会活動を通して、新技術の習得や普及、あるいは良質な人脈の開発についても積極的に取り組んでいく必要がある。

 基本的には、現在は「本物志向」の潮流であり「技術者冥利に尽きる時代の到来」であるので、追い風を背に2004年度も走り続けることになる。遠慮していて良いことなど何もない、というのが我が社のポリシーである。

【営業目標】
■NPOなどを介して、コンサルティングの有用性を民間にアピールするとともに、簡単な技術的アドバイスについてはボランティアとしてお手伝いするということを続けていく。対象は、自治会や、個人である。
■画期的な斜面対策工となる排水補強パイプ(地震対策・豪雨対策)および鋼管膨張型ロックボルト工(落石対策・岩盤〜風化岩の斜面対策)を普及させるための努力を行う。
■ソフト販売は、MVSを軸にして、地質の3次元表現が当たり前となるような環境を構築する。
■大手地質コンサルと共同して、周縁部強度を考慮した3次元安定解析の普及を図る。(現在投稿原稿作成中である)
■DOMAのメンバーで、新しい提案を論文等で行っていく(温度変化による斜面の安定度の変化と植生工の有効性についての定量的解析の論文を投稿中である)。今後もいろいろ計画がたくさんある。
フィービジネスについては、ねばり強く働きかけを続ける。


参考)2002年度決算報告