地すべりの周縁部効果

モデルとしたすべり面形状
土木研究所報告第2288号(1986)「道路建設に伴う切土工による地すべりの実態」から最頻度の地形を採用した
縦断形状と、底部・周縁部(頭部+側部)の分布
底部と周縁部の、滑動力・抵抗力バランス
滑動力は、底部が66%・周縁部34%であるが、底部摩擦φ(bottom)=15゜とすると、周縁部が抵抗力の55%を占めている。底部摩擦角が小さいとき、滑動力は小さいが抵抗力が大きいということが起こる。そして、これはとても「ありそうな話」である。
すべり易さの図
赤い●が滑動力−抵抗力が正となる箇所。その程度は●の大きさによって表しているが、おそらくこの図からは読めない。赤いところの位置が滑ろうとするところ、ということである。φ(bottom)=15゜の場合は、底部平面すべり上の土塊が滑ろうとしているので理にかなっている。φ(rim)=25゜の場合には、底部平面すべりの位置は抵抗力が滑動力に勝っている。すなわち「抑え部=圧縮部」ということである。報告書には、「層理面沿いにすべり面を形成する悪い地盤が流れ盤状で存在している」と記載されているはずだから、定性的にはφ(bottom)=15゜の方が妥当である。
切土の影響
その定性的に妥当なφ(bottom)=15゜のモデルで、切土をしてみると上記のような安全率変化となる。参考のために、底部・周縁部を区別しない単一すべり面強度による3次元安定解析結果も併記している。これをみると、末端部排土により安全率上昇が起こっている。頭部排土も場合によっては安全率が上昇しない(φ(bottom)をさらに小さくしていくと、頭部排土が安全率低下を招くということが起こる)。という現象が発生する。これはまさに周縁部摩擦力が相対的に大きい場合に起こるバランスの変化である。そしてどうも妥当なようなのである。いままで金科玉条の如く従っていた、末端部排土は安定性低下、頭部排土は安定性向上ということではなく、滑動部排土は安定性向上、抵抗部(周縁部)排土は安定性向上ということだったのではないか、とうい提言である。
切土形状
底部すべり面強度が小さく、周縁部摩擦でバランスしているような地すべりの場合、側部切土による安定性の低下が著しい。このような解析は、2次元断面法では不可能であるし、3次元安定解析であっても、単一すべり面強度法では無理である。
また周縁部摩擦等を別途評価する複数すべり面強度法による3次元安定解析では、2次元単一すべり面安定計算で「値が小さすぎて安全率が下がりすぎる」といって利用されていなかった土質試験によるすべり面強度が、「底部すべり面強度」として使用できる利点がある。安定計算と土質試験(力学試験)のファーストコンタクトである。

2004.7.26記

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