2004.5.12

2004.5.6 呉市西谷地区自治会との現地調査と助言
 太田ジオ・ホームページバージョン
平成16年5月6日(日)12:00〜20:00
場所:広島県呉市内の斜面
 
 有限会社太田ジオリサーチと呉市西谷町の自治会とのおつきあいは、芸予地震※で被災した谷埋め盛土の被害調査を京都大学防災研究所の釜井先生が行われ、太田がその講演会を聞きに呉市にうかがったときからはじまりました。
 今回は、芸予地震による災害ではなく、造成地の残土を谷に処分した跡地が危険になっているので視察し助言が欲しいということでお伺いしました。
 ※平成13年芸予地震(死者1名、負傷者46名). 地震発生時刻, 2001年3月24日 15時28分. 震源地, 安芸灘, 北緯34.1度 東経132.7度. マグニチュード, 6.4. 震源の深さ, 51km
 
今回は、一般市民のための防災・減災活動を目的として設立されたNPO法人「都市災害に備える技術者の会」の活動を兼ねて調査を行いました。
NPO法人『都市災害に備える技術者の会』から次のメンバーが参加しました。
太田英将(理事)、國眼 定(会員)、手嶋氏(非会員)
 
呉市は、戦前〜戦後にかけて軍港として栄え、人口集中により都市化が大きく進みました。呉市は瀬戸内海に面する反面、三方を山に囲まれているため、都市化は山間部へと進行していきました。
 昭和42年には西日本大水害を受け、斜面崩壊や土石流が頻発し、「急傾斜地法」制定の契機となった場所でも有名です。この後、現在までの30余年にかけて数え切れないほどの災害に見舞われてきました。
 このように、都市における土砂災害の代名詞として呉市は位置づけられています。
 呉市の山間部にある西谷町に住む人たちは、自治会単位で自主防災組織をつくり、「自分たちの家はできるだけ自分たちで守る」という精神で活動されています。
 今回、呉市西谷町の自治会の要請を受け、NPO都市災害に備える技術者の会より、上記2名が土砂災害に関する専門技術者として現地を視察し、助言を行いましたのでその概要を報告します。
 
@西谷地区の県道沿いの崖と大規模な盛土が不安定になっていました。

西谷町自治会の活動資料(xdw)
@西谷地区にある県道沿いには写真のようにむきだしとなった崖があり、無対策のまま放置されています。住民は、この県道の下に居住しており、豪雨時にはいつもヒヤヒヤさせられている、とのことです。また、写真の右手には沢沿いに30年前に作られた大規模な盛土地があり、これまでには盛土地から流出した土砂が、県道下の暗渠を流れ下ることが多いので、今後の豪雨時に盛土が流れ出さないか、とても心配で困っている、とのことです。
A盛土地の現地調査を終えて住民の方々へ説明する太田理事
B盛土の末端部では擁壁や水路などの構造物が破損し、機能を発揮していません。 C県道の下には幅2m高さ2mの横断函渠がありますが、流木や土砂で閉塞されるとダムアップする危険性が高いものとなっています。この下には人家が密集しています。
D盛土の末端部に長さ1mくらいの鉄棒(土層検査棒といいます)を指すと →→→→→ Eこのように簡単にめり込んでしまいます。これくらい盛土末端部の土はスカスカになっていて、大変危険です。
F盛土地上部にある水路は土砂で埋まってしまっており、亀裂から漏水も見られ、水路の役目を果たしていません。 G盛土地上部の斜面の肩にはこのような崩壊跡が見られます。
H天気は晴れていても、盛土地内ではこのようにたくさんの水が流れています。この水路の上流へ行ってみました。すると。。。→→→→→→ I盛土地のさらに上部にある県道の側溝からたくさんの水が垂れ流しとなっていることがわかりました。しかも流末処理なしに。。。
J道路の側溝をさらに追いかけてみました。すると。。
→→→→→
Kなんと道路の上流500mの間では側溝からどこにも水を排水していないことがわかりました。これでは別の山に降った雨も道路の側溝を伝ってこの盛土地に入ってくることになってしまいます。
現地調査の結果と対応策

@県道沿いの崖は高く、非常に急であるが、道路まで10mほどの余地があるので、待ち受け工(擁壁や籠など)を設置する必要がある。また、崖の上部には県道があり、そこから地表水が供給されている可能性が高いので、道路から崖への水の供給を防ぐような水路を検討する必要がある。これらは危険性を指摘した上で呉市あるいは県土木へ働きかけ、対応をお願いする。

A盛土地の末端部では構造物に変状があり、亀裂も大きく開口しているため、現時点で非常に不安定である。この場所は地山と盛土との境界部であり、県道のすぐ上流部である。このことから、盛土の末端部から土砂などが発生した場合、県道にある函渠を閉塞する危険性が高く、このときダムアップを招く危険性が高い。上流から供給される水の量は多いため、ダムアップした場合には非常に高い水圧が発生し、決壊すると下流側の人家へ多大な影響を及ぼすことは容易に理解できる。
対応としては、末端部の安定化(改修)、及び水路の掃除、暗渠布設が考えられる。また、盛土地の上流部に供給される、県道の側溝を見直す必要がある。
これらは所有者である呉市、ならびに県土木へ危険性を指摘し、科学的根拠を示して早急な対応をお願いする。

上記のような助言を行いました。
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A大雨のときとても危険な斜面が無対策のままになっていました。
@二つの急傾斜地崩壊危険区域に挟まれる人家(写真左端)では、大雨のときに谷筋から水が流入し、危険な状態にあります。住人はこの危険性を感じています。しかし、行政にこのことを陳情するも、杓子定規に「斜面勾配が30゜ないので急傾斜地対策として扱えない」と門前払いを喰っていました。
A住民から不安と不満の声を聞き、助言する國眼会員 B竹藪の向こう側では急傾斜地対策工事が行われているのに、どうして自分のところだけ対策工事をしてくれないのか。。。
現地調査の結果と対応策

・二つの急傾斜地の間の距離が50m以上あれば、上述した扱いとなるが、実際には30m程度しかないので、「一連の急傾斜地」として扱うことが可能な現場である。
・斜面の勾配の取り方も、斜面のどこを起点とするかによってどうにでもなると判断できる。・人家背後では傾斜が緩やかであるが、人家側方の斜面では高さ・勾配とも充分に指定の基準に合致している
・大雨が降ると家の中に大量に水が流れてくることを訴え、例えばそのときの写真を撮影しておくなど、危険度をアピールできる資料を用意することが必要である。

以上のように急傾斜地崩壊対策事業として適用を受けるように助言を行いました。また、危険区域の設定に関する資料を渡してあげることにしました。
所感:
我々技術者は、普段は公共事業関連の業務がほとんどなので、代理人(行政)とばかり話(打合せ)をしているわけです。
しかし、今回のように災害の危険を感じている「依頼者の顔」を見て仕事ができるのは技術者にとってとても有意義です。
なぜなら、自分の技術が依頼者の役に立っていることをものすごく実感できるわけですから。(S.K.記)
<その後>2004.6.3メールより
> 要望書、市と県に提出してきました。
> 市は5月31日に、県のほうは次長の都合で今日3日いってきました。
> 市の回答は、東側の側溝の土などを早急に取り除く。
> 三面張りすぐ上の覆いかぶさった木などは伐採し、流出している
> 石などは取り除くがブロック擁壁は今すぐつつくと危険。やるとしたら、どんなやり
> 方がよいかいろいろ考えていますと、大雨が予測されるときなどは見回りをする。こ
> れらは業者に早急に発注する。予算がとれるまで調査しながら様子見ということらし
> いです。
>
> 県の回答は、担当者が4月に変わったばかりで現地をまったく把握できていない、近
> じか現地に行きます。
> 以前、市とこれらのことを(堰堤や河川の改修などの要望)話し合う機会があり市の
> ほうが「近じか調査しなければならない」と言っていたとの報告だけで、県としては
> 現地を見た上でないと回答できないということです。
>
> きちんとした要望書を提出できたことは國眼さんのおかげです。
> 今までとは少し違った対応に見受けられました。
> 本当にありがとうございました。
> まだまだこれからですがみんなで頑張ります。
> よろしくご教示お願いします。

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